本来、音楽を聴くという行為は、ライブ演奏である

 ライブに行けなかったから仕方なくレコーディングを聴く。多くのリスナーがこの20年間、CDしか聴いてこなかったということは嘆くべきことだ。

 サイデラ・レコードでは、限りなくライブに近い音場をスーパーオーディオCDマルチチャンネル・フォーマット (以下SACD) でお届けします。これぞ初めて音楽の本質を捉え再現できることを可能にしたフォーマットで、現実空間で発せられる音のほぼすべてを、空間の広がりまでを美しく再現することができる。楽器が、ミュージシャンが、目の前にに存在するように聞かせることができる。背景音、アンビエンス、響きなど、ごく微弱な音まで精密に再現される。音の立ち上がりの速さ、消え際にいたっては従来のオーディオでは不可能な領域まで再現可能となった。

 小さな子供たちが初めて楽器にふれたり、音楽に夢中になるきっかけは、その「音色(ねいろ)」がいいことがとりわけ重要である。「安心していい音だ」と感じるには、発せられた音と共に「美しい響き」がある時である。それが伝わった時に、美味しいものに自然とすーっと手がのびるように「音にふれたい」という衝動がおこる。そして、音楽が好きになる。まずいい音に触れること。
 演奏するという行為は、楽器から音を発するだけでなく、意識的あるいは無意識のうちにも心から何か伝えようとする。それが音楽。演奏や歌を通しての「気持ち」「心」であり、喜びであり、涙を流したり、震えてきたりする。いい気持ち。曖昧な記憶。ノスタルジック。エキサイティング。そして、もう一度聴きたいと感じる。

 これがライブだと伝わるのに、CDではうまく伝わらなかったのはなぜか?ライブでは演奏者と観客の間には空気しかない。発音された音は空気を伝わって届く。演奏者の心(主観的領域)も空間を伝わって観客の印象(やはり主観的領域)として受けとめられる。レコーディングでは、音楽が視聴者の印象(主観的領域)にまで伝わる過程で、マイクやミキシング・コンソールを通してメディアとなり、最終的には視聴者の好きな再生装置を通してようやく耳へと届く。この情報のすべてが「物理的領域において全く変形せずに伝送できれば」ライブで観客が受けるのと同じ感動を視聴者にも伝えることができるはずである。ところがこれが簡単ではない。情報処理の基本は、物理的領域において変形させないこと。まずは1:1。コーヒーにミルクを入れるとあとからいくらコーヒーを足してももともブラックコーヒーには戻せない。今までのオーディオでは伝送過程においても波形が変形したため、ライブの音と録音から再現された音は、無意識のうちにも区別されていた。

 SACDではこの物理的領域の変形が、CDや他のメディアに比べて圧倒的に少ない。SACDで使用する「1-BIT」方式とは空気の疎密波に極めて近い。音の立ち上がりスピード、響きや音の消え際までレゾリューションを全く落とすことなく、原音忠実に記録、伝送、増幅したりできる。CDなどのPCM方式では「響き」や音の消え際のグラデーションが十分に表現できていなかった。正確に言うと、DAコンバーター、アンプにおいてもカラーリング(脚色、演出)されている。ここが決定的に違う。「響き」や音の消え際には音符に記されていない重要な音楽情報があるのに、微妙なニュアンスが音楽家ではなく、オーディオの趣向として色付けされていた。主観的領域(好み)は演奏者も観客も自由であるが、まずカラーリングしない演奏そのものを伝えてからの話である。


「演奏家の心」を「視聴者の印象」にまで、ライブと同じように届けることを目指していくとスーパーオーディオCDが、現存するメディアの中で物理的にもっとも優れている。「1ビット」による信号の物理的領域(伝送、記録、複製、増幅)の特性は、アナログやPCM に比較して明らかにトランスペアレンツである。限りなく1:1である。ライブと同じようにそこにに空気しか存在しない状況に極めて近い表現が可能になる。

 ワインは好きなグラスで好きな温度で好きな量だけ飲めば良い。ただしボトルを開けるまでは生産者がつめた同じ品質を保つこと=「物理的領域」では変化してほしくないというセオリーである。そのワインが本物でおいしいと感じるかどうかは、まったくもって楽しむ人の自由であることは言うまでもない。




プロ及びマニア向け 家庭でも簡単にできるサラウンドの楽しみ方



サラウンドでは、より精密にセッティングすることが、よりリアルにお楽しみいただくための条件となります。ITUスタンダード(ITU・BS.775-1推奨5チャンネル・ステレオ・サラウンド・スピーカー配置)が制作現場での基準になります。ITUではD点を中心に半径3mですが、家庭にそこまで大きなリビングをお持ちの方は少ないと思います。でも大丈夫。図h-i-j-kのような6畳間あるいは4畳半でも十分お楽しみいただけます。

まず「理想論」を並べます。これらの条件を満たさなければお楽しみいただけない、というわけではありませんのでご安心を。5本のスピーカーは均等なものであること。あえてプライオリティをつけるならL/R/Cは同じスピーカー。図のDがリスニング基準ポジション。A,B,C,E,Fがスピーカー位置です。それぞれのスピーカーのまわりに余計な家具などがないこと。部屋自体に不快な共振やフラッターがないこと、部屋は必要以上にデッドでもライブでもないこと。天井はj-kよりも高い方がいい。

以下、位置決めから始めて音色合わせまで、できることから始めましょう。制作現場では、図の位置にスピーカーを設置し、ピンク・ノイズなどテスト・トーンと測定機でレベルと周波数特性を確認するのが一般的です。家庭でも最終的には測定、確認した方が安心かとは思いますが、周波数特性しか計測できない測定器を使用するよりも以下の方法により短時間で良い結果を得ることができます。1日でがんばるのではなく、いろいろなソフトを楽しみながらじっくり時間をかけて、より良くなるように努力してください。

聞きなれたCDを使用して、音像が、A-B, A-C, C-B, C-F, C-E, E-F どの組み合わせでも同じ状態で正確に再現できるように、ボリューム、ピンポイントでの定位、音色をこまかく追い込んで調整していきます。またエアコンやコンピュータ、冷蔵庫など耳に入るノイズには「できる限り」の対策をしましょう。マイクとレコーダーがある場合、その部屋でレベルいっぱいにして録音してみるとノイズをすぐに発見できます。サラウンドの家庭での再生環境にはこういうことも重要な要素です。

***位置決め***
1. この図を部屋にあてはめてA,B,C,D,E,F各点をマーキングする。必ずしも部屋をいっぱいに使用する必要はない。h-i-j-kの空間にはスピーカー以外に何も置かない方が良い。5個のスピーカーが入るスペースを考えて、まずD点を決める。部屋が長方形(h-i-j-k)である場合、図のように横長の方にする方が良い。ツイーターの位置が耳の位置になるように高さも揃える。ただしE, Fについてはやや上方から (15度以内)斜めにしてもよい。
2. C点にセンター・スピーカーを設置し、D点から均等な距離になるようにA-B点を決める。まずD‐A‐Bが正三角形になるように基本となるステレオのセッティングをする。A-Bでお気に入りのCDを再生。C位置のスピーカーの影響、A,B周囲の影響も最小限になるように注意。(やむおえずC点がA-B線上にきてしまう場合は、D点で聞いた際にCだけが音量が下がらないように注意。少し天井の方向を向けるなどにより各スピーカのエネルギーが同じになるようにする。DVD映画などの場合、ダイアローグがセンターで非常に重要な役割をしています。)
3. 次にA-C, C-BでCDを再生し、A-Bの印象と違和感がないようにCを調整。
4. E-Fのスピーカーを設置。C-D-e2(e3)、C-D-f2(f3)が100〜120度の範囲がITU推奨。サイデラではC-D-Eは110度。そしてE-FでCDを再生。E-Fの中心にセンターがきちんととれて、幅は広いが、イメージがA-Bと同様のイメージになるよう調整。
5. C-E, C-FでCDを再生。イメージがE-Fと同様になるよう音色調整。更にA-Bと同様になるよう2,3,4を繰り返し調整を追い込む。モノ音源で2個のスピーカーのセンター定位、また1本ずつ鳴らして音色調整。均一が理想的であるが、あえてプライオリティをつけるとすると、まずはA-B、そしてE-Fということになる。
6. D-A-B が正三角形でA, Bが60度でDの方向を指していると、ステレオ・イメージが狭くなることがある。サイデラではA, Bは、やや後方のG点を向いている。この場合2,3,4を繰り返しチェック。A,B,C,E,Fが同質のイメージが再生されれば、ひとまず完了。


***音色調整***
まずA-Bで適切な音量を決める。ここが満足に決まらないとすべてが甘くなる。
・ボリューム感だけでなく、ピンポイントでの定位や音の立ち上がりは?
・スピーカー周辺に音が反射している部分がないか?
・スピーカーの足回りで共振している部分はないか?
・ある帯域が不自然に強調されたり足りなかったりしないか?
低音が膨らんでいる場合や高域が足りない、もしくは多い場合も、スピーカー自体の置き方に起因することが多い。スピーカー自体も振動しないように、固い重たいものの上に設置する。合板やブロック、大理石、薄いゴム、コルクなどを駆使して自然な音色になるように追い込んでいく。最後はオーディオ用インシュレーターを使用してよい。安易にトーン・コントロールやイコライジングなどで調整しないこと。

また、A-C, C-B部分の空間、A, B, Cの後ろ側に吸音材(ソネックスかグラスウール)を置くと効果がある。h-i, j-k 壁面のスピーカー後ろあたりに吸音材を張ってやるのも効果がある。吸音しすぎないようにする。逆に厚手の絨毯、カーテンなどでまったく残響の感じられない部屋の場合は、床、スピーカーの後ろ、その前、バーチ合板などをならべて少し反射を作ってやると自然な音が得られる。

LFEチャンネル
Low Frequency Effect。5.1チャンネルの低周波数部分、サブ・ウーハ-は映画の効果音(爆発の余韻、地震など)で最も有効ですが、音量調整はソフトによって異なる。効果的な部分を何度も確認し、部屋自体の共振や低域の癖を見極めて調整する。サイデラ・マスタリングでは、PMC MB1をh-A, B-I位置で使用。サイデラ・レコードのSACDマルチチャンネル・フォーマット作品は5.0です。LFEは、音楽では特殊な場合を除いて必要ないと考えています。

March 2005 v.2.2




では、ステレオにこだわる人は、SACD(サラウンド)は楽しめないのか?


そんなことはございません。オーディオの王道はステレオである、とも言われます。
CDとSACDはぜんぜんちがいます。誰でも判ります。SACDでは悪い録音(本来そんなアルバムは作ってはいけないのですが)はリアルに悪く聞こえます。すぐれたアルバムでは鳥肌が立ちます。ピンク・フロイドでも、キャロル・キングでもマイルス・デイビスでも、今まで聞いていたCDは何だったんだろう!?と感じることでしょう。SACDでは小さなシステムでも音楽にもっとも重要な繊細な部分までしっかり伝わります。大きなシステムではそれなりに大きな感動もうけます。

写真は、サイデラ・レコードのオフィスですが、タイムドメイン理論の8cmのフルレンジ(ECLIPSE 508)から流れ出てくる音も素晴らしいです。一例として推薦できるシステムです。

ちょっとこだわっている部分を説明しましょう。※スーパーオーディオCDプレーヤーであること。※5.6MHzの1ビットアンプであること。※タイムドメイン理論のスピーカーを使用する。この3点に共通していることは、録音されている情報に色付けをせず=波形を変形させることなく、つまり空気の疎密波のように1ビットで記録されている信号をできうる限り忠実に空気振動にして聞くことができます。ごくふつうの普及価格帯の市販のモデルの組み合わせ例です。