Bar del Mattatoio / Seigen Ono
「バ−・デル・マタトイオ(屠殺場酒場)」を聴くこと、それはユニ−クな体験だ。オノセイゲンはただちに私たちを人間的でまた地理的な風景の中へ運んでくれる。官能と甘さとメランコリ−のあふれる風景へ。生活の強烈な楽しさと、生活をうまくまとめていけないことがわかったときのあいまいな悲しみ、そのふたつのブレンド - - - ブラジル人ならたぶんわかるだろうが - - - がここでは稀にみる詩的な力で捉えられている。 フェリ−ニの映画にありそうなセンチメンタルなメロディ−は、聴かれるというより思い出される。このメロディ−は海から現れ、砂浜やアスファルトや歩道に広がる群衆を通り抜け、リオ・デ・ジャネイロの街のために太陽がもえている青空へと抜けてゆく。しかしここで大切なのはさまざまな声のサウンド、波、ここで述べたことから沸き上がってきた視覚的な印象ではない。フレ−ズやノイズはあたかも見えない映像でできた映画のサントラであるかのようには聞こえてこない。私たちを驚かせるのはサウンドのパワ−の理解である。物売りの声、電話の会話、波の極めて微妙なミックスは完全にアコ−ディオン、サックス、ヴァイオリンの音色の選択に力を貸している。ひとつのテ−マが何度も繰り返され - - - キュ−バのボレロとブラジル北東部のトア−ダ(民謡)- - そのセンチメンタルな変奏はアルバム全体を通してちりばめられた甘いアイロニ−をかもしだす。そのために少しあとで、ゆかいなチュ−バがベ−スになって、おどけ者のヴァイオリンとふざけあうときに、私たちがただちにそのすべてが懐かしさ - - - 何に対する懐かしさなのかはわからないのだが - - - のフィルタ−を通して聞こえてくるように感じるのだ。音楽とこうしたサウンドは世界や娯楽や音楽の概念を通して私たちのもとへやってくるのだ。音楽はつねに聞こえてくる構成物を越えたもの、ほかの場所にあるものなのだ。二−ノ・ロ−タや小津映画のサントラのことを考えればよい。そのあと、コンガ、ベ−ス、ファンキ−なホ−ンの曲では、ギタ−とサックスの即興が聞こえてくるのだが、ありきたりのジャズ・フュ−ジョンを聞いているような感じはしない。そうではなく、ジャズ・フェスティバルをやっている最中のヨ−ロッパの小さな町のホテルにいて、広場でやっているバンドが聞こえてくる、そんな自分を簡単に想像できるだろう。ヴァイオリンはただコメントと気持ちの喚起がここでは一番大事なことなんだと確認するにすぎない。私たちにこのような印象を与えるのは単にミックスや演奏のせいではない。スタイルの「モンタ−ジュ」のテクニックが、時にたった一節の中にさえコントラストを与えるのだ。そして批判的な考えを生み出したり、実際には聞こえていないがそこに実在してもよいようなほかの音楽やサウンドへの記憶へと私たちを導いたりする。ほかの曲ではフランスの子どもたちの話声や歌声がノイズから立ち現れ音楽となる。そして優美なリズムとほぼメロディ−の話声が互いに絡み合ってひとつのメッセ−ジ(レコ−ドのすべての登場人物と妄想のメッセ−ジ)が生まれる。そのメッセンジャ−は子どもたちなのだ。たぶんもうひとつのメッセ−ジはタンゴにある。実はこれはサンバであり実はこれは私たちをあれやこれやの思いにいたらせる悲しみと幸せを運ぶ遊びなのだ。別の曲にあるバイ−アの街の通りのパ−カッションのサウンドは他の曲とは異なる。とても離れているのに、理性と純粋な心のまじりあった処理をされている。たぶんこの調和はこのアルバム全体を説明しているかもしれない。理性の洗練と心の純粋性。すべては - - - ブラジルがあふれているにもかかわらず- - - が日本のタッチだ。シロフォン、ヴィブラフォンとピアノのコンビネ−ション、甘すぎるキャンディ−のように西洋的でもある旋律の合間に現れる東洋的な音程。無邪気なようにみえる知識。真実の無垢。不思議なしとやかさと不思議な大胆さ。「バ−・デル・マタトイオ」は独創的なオブジェだ。 |
SD-1004 Montreux 93/94 / SEIGEN ONO ENSEMBLE
この10年間モントル−・ジャズ・フェスティバルでは、最終日の「ネバ−・エンディング・ナイト」を続けている。93年7月17日、モントル−に初めて演奏に来たオノセイゲン。彼がマイルス・デイビス・ホ−ルのステ−ジを降りたのは朝6時、(その年の)トリをつとめた。セイゲン・オノ・アンサンブルは、驚くばかりの多国籍ミュ−ジシャンと新鮮なアレンジ、そして多彩なリズムとその独創的なサウンドで観客全員を驚かせることになった。彼のショ−が終了すると、窓のカ−テンが開けられ観客はレマン湖の朝日を見た。それはマジカルな瞬間だった。27回のフェスティバルで初めて、 私は(ショ−が終了後)その場でひとりのア−ティストを翌年のストラヴィンスキ−・ホ−ルの大きなステ−ジへと招待した。そしてすべては順調に運び、今年7月11日夜、セイゲン・オノと彼の多国籍バンドがステ−ジに登場した。それはラロ・シフリン(スパイ大作戦のテ−マ等で有名なアルゼンチンの作曲家)とミュンヘン交響楽団にグラディ・テイト、レイ・ブラウン、スライド・ハンプトン、パキ−ト・ド・リベラ、ジョン・ファディスの後だった。この年、彼はステ−ジ上にフルサイズのブラジリアン・カフェを作リ、演奏が始まるとそこでふたりの女性が「カイピリ−ニャ」というブラジルのナショナル・ドリンクを作りはじめた。それはまずミュ−ジシャンに、明らかに熱狂は高まり、そして観客の何人かにもサ−ビスされ、ステ−ジに招かれダンスに加わる者もあった。2杯のカイピリ−ニャと彼の1時間の音楽の後、気がつくと私はステ−ジ上でひとりのブラジリアン・レディといっしょにタンゴを踊っていた。 セイゲン・オノの音楽の魅力は言葉では表わせない。「聴く」ことによってのみ触れることができる。独創的感触、マジカルな雰囲気、デリケ−トなメロディ−、ミュ−ジシャンの質、それらすべて、オノセイゲンによりジェントルに指揮されるすべてのプロジェクトは、記憶に残る夜を作りだした。 |
SD-1003
Bar del Mattatoio / Seigen Ono |
SD-1004 Montreux 93/94 / SEIGEN ONO ENSEMBLE |
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| All compositions written, arranged and produced by Seigen Ono, except lyrics for "Pessoa Quase Certa" by Arto Lindsay and lyrics for "Kodai Tenmondai" by Gozo Yoshimasu. This album is dedicated to Keiko Courdy. Art direction, design and album title by Tsuguya Inoue for Beans. Photography by Seigen Ono except portrait by Juan Esteves. Mixed and mastered by Seigen Ono at Saidera Mastering, Tokyo, July to October 1997. Entire album mixed and mastered in 24-bit process with YAMAHA O2R V.2 A-1, 3, 4, 13, 16 recorded at Saidera Aoyama Studio, October 1996, Tokyo A-2, 5~12 recorded at Hitokuchizaka Studios, October 1996, Tokyo by Yasuo Morimoto A-14 recorded at Hitokuchizaka Studios, February 1995, Tokyo for International Musicians’ Fund for the Great Hanshin Earthquake M7.205:46 January 17, 1995 A-15 recorded at Toshiba Studio, May 1995, Tokyo by Yasuo Morimoto B-1~4, 6~11 recorded at “Time Zones "95, Sulla via delle musiche possibili", October 1995, Bari, Italy B-5 recorded direct to DAT at “30th Pori Jazz Festival” July 1995, Finland by Gary F. Baldassari B-12 recorded direct to DAT at MIS, November 1992, Sao Paulo, Brazil C-1~11 recorded at NHK 506 studio, July 1997, Tokyo C-12 recorded at “Klanglandschaften, Festival fuer Improvisation und Experimentelle Musik Leipzig”, November 1996, Germany Performed by Seigen Ono: Charango on A-3, 14, 16, B-1, 2 / Guitar on A-4, 15, B-3, 5, 12 / Electric Guitar and Sampler on C-12 Joao Parahyba: Percussion on B-2~11 Toninho Ferragutti: Accordion on B-2~11 Mane Silveira: Alto Sax on B-2~11 Marco Mancini: Tenor Sax on B-12 Gozo Yoshimasu: Poetry Reading on B-12 Issei Igarashi: Trumpet on A-15, B-4, C-2, 3, 5, 7, 9, 10 / Electric Trumpet on C- 12 Nao Takeuchi: Bass Clarinet on C-3~5, 11 Keiichiro Shibuya: Prepared Piano on C-1, 2, 6~8, 10 Marco Bosco: Percussion on A-15, C-1~5, 7~11 Masashi Togame: Clarinet on A-1, 2, 5~8, 10~12 / Bass Clarinet on C-1, 3, 5, 7~10 Masataka Matsumoto: Tuba on A-1, 5~12, C-3~ 6, 9, 11/ Euphonium on A-2 Hideaki Yamaoka: Accordion on A-1, 2, 5~12 Motoyoshi Furuya: Trumpet on A-1, 2, 5~12 Mariko Okamoto: Piano on A-2, 7, 12 / Percussion on A-1, 5, 6, 8 Eugenio Dale: Vocal and Guitar on A-14 Chikara Tsuzuki: Harmonica on A-14 Nahame Menesello Casseb: Drums on A-15 Febian Reza Pane: Piano on A-15 Shinichi Sato: Electric Bass on A-15 Yoshiko Kaneko: Violin on A-3, 4, 13 Yuka Matsunuma: Viola on A-1, 3, 4, 13 Den: Cavaquinho on A-16 Koji Abe: Guitar on A-16 Kyoko Katsunuma: Vocal on A-16 Estelle Bauer: Voice on A-16 Time Zones Ensemble on B-4, 6~11 Violin: Flavio Naddonni, Tommaso Lagattolla, Giuseppe de Crescenzo, Domeno Strada, Viola: Francesco Capuano, Stefania Stassi, Contra Bass: Francesco Barile, Cello: Maria Teresa Bari, Mauro Gentile, Mario Petrosillo, Elia Ranieri, Piano: Fiorella Sassanelli, Harp: Zaira Antonacci, Director: Bepi Speranza |
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